AMI PARISのハートの秘密。ロゴだけではない人気の理由はリラックス・テーラリングにあり。

GUARDAROBA MILANO OFFICIAL STORE
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ここ数年、街中あるいはSNSで、ハートとAを組み合わせた印象的なロゴを目にする機会が急激に増えたと感じませんか? K-POPのトップアイドルを筆頭に、インフルエンサーたちがこぞって身につけることで、今や世界的な人気を博しているブランド、AMI PARIS(アミ パリス)。

実は、私たちガルダローバミラノでも、今のようにハートのロゴが有名になる以前、オックスフォードシャツやウールスラックスといったアイテムを一時期取り扱っていたことがあります。AMIはファッション界における数々のビッグメゾンで腕を磨いたデザイナーが、「友人たちのための、リアルで気取らない服」を作りたいという純粋な想いから始めた、きわめてパーソナルなブランド。

AMI PARISの現在の人気を支える、その揺るぎない根幹とは何か。創設者の類稀な経歴、ブランド名とロゴに込められた温かいメッセージ、そして確かな技術に裏打ちされた唯一無二のスタイル。AMI PARISのハートの秘密を知れば、きっとあなたもこのブランドをもっと好きになるはずです。

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デザイナーの肖像
アレクサンドル・マテュッシという人物

AMI PARISを理解するために、まずデザイナーであるアレクサンドル・マテュッシという人物の類まれな経歴を紐解いてみましょう。

1980年、フランス・ノルマンディー地方に生まれた彼のクリエイションの原点は、意外にもバレエにあります。4歳から10年間、パリのオペラ座の舞台を夢見て厳しい鍛錬に明け暮れた日々。そこで培われたのは、厳しい肉体的な規律と、衣装、音楽、演出といった全ての要素で一つの世界観を創り上げる「総合芸術」としての視点でした。この経験が、後の彼のデザインに深い影響を与えたと言われています。

しかし、ダンス界の熾烈な競争に幻滅し、14歳でその道を断念。情熱の対象を失った彼が次なる情熱を注いだのが、ジャンポール・ゴルチエやティエリー・ミュグレーといった90年代のデザイナーたちが創り出す、バレエの舞台に劣らぬほど華やかでドラマティックなファッションの世界でした。

新たな夢を見つけた彼は、パリの名門デザインスクールを卒業後、まさにファッション界の王道とも言えるキャリアを突き進みます。Dior(ディオール)のメンズラインから始まり、Givenchy(ジバンシィ)では5年以上にわたりメンズテーラーリングの技術を徹底的に習得。その後、Marc Jacobs(マーク ジェイコブス)のメンズ部門に移り、パリ、ミラノ、ニューヨークを往復する多忙な日々を送りながら経験を重ねるなど、30歳になる頃には、世界最高峰の環境でラグジュアリーファッションの真髄と卓越した技術をその身に吸収していました。  

AMI PARISのカーディガンを使用したコーディネート

AMI PARISの誕生と ハートに込めた想い

ビッグメゾンでの華やかなキャリアを積むアレクサンドル・マテュッシ。しかしその一方で、彼自身のクリエイションへの渇望は、より一層強いものになっていきました。彼がトップメゾンの世界で目の当たりにしたのは、時に現実離れした、夢のようなファンタジーとしてのファッション。それに対して、彼が心から作りたいと願ったのは、もっとパーソナルで、地に足の着いた、自分や友人たちの日常に寄り添う服だったのです。

「友人たちのための、リアルで気取らない服が作りたい」

2011年、30歳になった彼はその純粋な想いを胸に、自身のブランドAMIを設立します。そして、そのデビューはブランドの哲学を何よりも雄弁に物語っていました。 最初の2011-12年秋冬コレクションが発表されたのは、ファッションウィークの華やかなランウェイではなく、パリの小さなカフェ。モデルたちはまるで仕事帰りに集まった友人たちのようにリラックスし、その親しみやすい雰囲気は、AMIが目指す気取らないムードと、人々が集う温かいコミュニティとしてのブランドのあり方を明確に示していたのです。

この想いは、ブランド名にも色濃く反映されています。「AMI」は、フランス語で「友人」を意味すると同時に、彼の名前(Alexandre Mattiussi)のイニシャルなどを組み合わせたもの。 さらに、今やブランドの象徴となった「Ami de Coeur(アミ ドゥ クール)」のロゴもまた、彼のパーソナルな想いから生まれています。「心の友」を意味するこのハートのマークは、元々彼が幼い頃から親しい友人への手紙の最後に記していた、愛情のこもったサインそのものでした。

ブランド名とロゴ、その両方に込められた「友情、愛、親密さ」という温かいメッセージ。それこそが、AMI PARISのすべてのクリエイションの原点なのです。

加えて彼は、アクセシブル・ラグジュアリー(手の届く贅沢)という基本理念を掲げます。ビッグメゾンで培った確かな品質と優れたデザインを、過度に高価ではない、現実的な価格帯で提供したい。この誠実な姿勢もまた、多くの人々と友人として繋がりたいという想いの表れであり、世界中の人々から共感を呼ぶ大きな理由となっています。

AMI PARISの哲学は、「どんな服を作るか」だけに留まりません。デザイナー、アレクサンドル・マテュッシがバレエで学んだ総合演出の視点は、服作りだけでなく、親密なショーの雰囲気作りや、顧客とのコミュニティ形成といった、ブランド全体の体験設計にも活かされています。

厳しい規律の世界(バレエやビッグメゾン)と、そこからの解放(友人たちのためのリアルな服)。この両極を知るからこそ、彼は現代の男性が本当に求める、新しいラグジュアリーの形を提示することができたのです。

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AMI PARISの真髄
リラックス・テーラリングとは何か?

AMI PARISのスタイルを語る上で欠かせないのが、「リラックス・テーラリング」というキーワードです。

アレクサンドル・マテュッシは、現代メンズウェアの大きな潮流を何年も先取りしていた先駆者と言えるでしょう。彼がブランドを立ち上げた2010年代初頭、メンズファッションにはまだフォーマルとカジュアルの間に明確な境界線が存在していました。しかし、AMIは当初からその境界線を意図的に曖昧にし、「フォーマルウェアとカジュアルウェアの衝突」とも言えるスタイルを提唱したのです。

これは、現代に一般化した単なる着心地の良いカジュアルウェアとは一線を画します。その本質は、DiorやGivenchyといった最高峰のメゾンでテーラリング技術を究めたデザイナー、アレクサンドル・マテュッシだからこそ生み出せる、緻密に計算された気楽さにあります。

完璧なジャケットやスラックスの構造を知り尽くした上で、意図的にその堅苦しさを取り払い、現代のライフスタイルに合うリラックスしたシルエットへと再構築する。だから、AMIの服はゆったりとしていながらも、決してだらしなくは見えません。人体の構造と布地の流れを熟知していなければ生み出せない、その絶妙なバランス。そこには、確かな技術に裏打ちされた、大人にふさわしいエレガンスが常に宿っているのです。

スーツにスニーカーを合わせるスタイリングや、上質な素材で作られたテーラード仕立てのスウェットパンツなど、フォーマルとカジュアルの境界線を心地よく曖昧にするスタイル。それこそが、AMI PARISが提案する、現代のパリジャン・シックなのです。

メゾンキツネとの違いは?

同じくパリを拠点とし、アイコニックなロゴで人気のMaison Kitsuné(メゾンキツネ)と比較すると、AMI PARISの立ち位置はより明確になります。

メゾンキツネが、音楽やアートといった多様なカルチャーを背景に持つライフスタイルブランドとして、グラフィカルで遊び心のあるデザインを展開するのに対し、AMI PARISは、あくまでデザイナー自身の経験と美学、そしてテーラリングという服作りの伝統に深く根ざしています。そのため、AMIのコレクションには、リラックスしたムードの中にも、より構築的で、普遍的なエレガンスが感じられるのです。

大人にもおすすめしたいAMI PARIS

ハートのロゴがSNSを席巻し、K-POPアイドルの愛用もあって、AMI PARISは若い世代のブランドというイメージが強いかもしれません。しかし、その人気を一過性のブームで終わらせない、揺るぎない本質こそ、私たち大人の男性におすすめしたい理由なのです。

DiorやGivenchyで磨かれた卓越したテーラリング技術を土台にしたリラックス・テーラリングは、ただのカジュアルウェアとは一線を画す、大人のための計算され尽くした気品と快適さを両立しています。

そして、デザイナーの温かい人柄が滲む友人のための服作りという哲学。トレンドのロゴを消費するのではなく、その背景にあるストーリーや想いに共感して服を選ぶ、という本質的な楽しみ方をAMIは教えてくれます。確かな品質を、誠実な価格で届けるという姿勢も、本物を見極める目を持つ大人にこそ響く魅力です。

AMI PARISのハートのロゴを身につけることは、若者のトレンドを追うことではありません。それは、デザイナーの哲学に共感し、その温かい「友人」の輪に加わること。あなたの日常のスタイルに、肩の力が抜けた上質な洗練さをもたらしてくれる、特別な体験となるはずです。

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