REPLAY(リプレイ)を深掘り!日本のダブルリングデニムとの出会いと革新素材ハイパーフレックスの秘密

ガルダローバミラノで取り扱うデニムといえば、PT TORINO DENIM、JACOB COHËN、Tramarossaといったイタリアのサルトリア文化を背景に持ち、スラックスのような品格を纏うドレスデニムを主力としてご提案してきました。これらのブランドがつくるのは、スラックスの代わりに履くジーンズ、ジャケットに合うジーンズをメインに据えたものでした。

しかし、今回登場するREPLAYの原点は「スマートカジュアルデニム」。アメリカンカジュアルの持つオーセンティックな雰囲気をイタリアならではの洗練されたデザインで昇華させたスタイルが特徴です。

日本ではファッション好きな大人世代から特に厚い支持を得ているREPLAY。オフの日のカジュアルスタイルを豊かにしてくれるこのREPLAYが、どのような歴史や哲学を持ち、どのような個性を持つのか。そして、他のブランドとの違いはどういったところにあるのか、紐解いていきましょう。

すべては「再生」から始まった サッカーW杯が生んだブランド哲学

1978年、『サタデー・ナイト・フィーバー』が日本で公開され、世界中がディスコブームに沸いた年。創業者クラウディオ・ブジオールが、ある一つの言葉にインスピレーションを得たことから、REPLAYの歴史は幕を開けました。

ブランド名の着想は、ブジオールがサッカーの試合(1978年のアルゼンチンワールドカップ)をテレビで観戦していた際に、画面に繰り返し表示される「REPLAY」という文字を目にした瞬間に訪れたという、有名な逸話に基づいている 。この偶然の発見は、ブランドの全哲学を凝縮する運命的なものであった。

この「REPLAY」という言葉は、単なるブランド名に留まらず、ブランドの核となる哲学そのものとして、創業から40年以上経った今もなお息づいています。REPLAYには、「リ・メイク(re-making)」「リ・クリエイト(re-creating)」「リ・エラボレート(re-elaborating)」という概念が内包されているのです。

言葉を変えれば、ヴィンテージの美学を尊重し、古き良きものに最大限の敬意を払いながら、現代の技術と感性で「再生」するということ。この哲学が、時代を超えて愛されるREPLAYのすべてのアイテムに、一本の太い筋として通っています。

デニムブランドとしての地位を確立した歴史的転換点

意外に思われるかもしれませんが、1981年にイタリア・アーゾロで創業した当初、REPLAYはカジュアルシャツに特化したブランドでした。その名をデニムの世界に轟かせるきっかけとなったのが、1989年に訪れた歴史的な転換点。「ダブルリングデニム(*1)」をREPLAY流に再発明したことがキッカケでした。

この日本のデニムメーカーが生み出したダブルリングデニムに、イタリアならではのデザインやウォッシュ加工を施したジーンズが、わずか2年間で100万本を売り上げるという驚異的な成功を収め、REPLAYが本格的なデニムブランドとしての地位を不動のものとする礎を築きました。

この出来事こそ、日本の優れたデニム製造技術と、リプレイの「過去の最良のものを現代的に再解釈する」という哲学が出会った、ブランドの歴史における象徴的なエピソードと言えるでしょう。

この成功を機に、REPLAYはシャツブランドから本格的なデニムブランドへと飛躍。その後はジーンズという枠を超え、トータルルックを提案するグローバルなライフスタイルブランドへと進化を遂げていったのです。

デニムの常識を覆した革命 ハイパーフレックスという名の技術革新

ダブルリングデニムは、REPLAYの象徴として、今もブランドのDNAの一部として存在しています。しかし、「再生」を哲学とするREPLAYがデニムを穿くという体験そのものを再創造(リプレイ)するために生み出したのが、2014年頃に発表された「ハイパーフレックス(Hyperflex)」でした。 

これはブランドの技術的DNAの結晶です。ハイパーフレックスには、「驚異的な伸縮性」「優れた形状保持力」「本格的なデニムの風合い」という、従来では両立が難しかった3つの要素を完璧なバランスで実現しました。

一般的なストレッチデニムといえば、コットンにポリウレタン(エラスタン)を混紡することで伸縮性を高めたものが主流ですが、ハイパーフレックスは全く異なるアプローチをとりました。その秘密は、REPLAYが特許を持つ特殊な3層構造のコアスパン糸にあります 。 

まず、糸の中心である芯に伸縮性の源となるライクラを配置し、これにより最大120%という驚異的な伸縮性を実現。次に、そのライクラを中間層のポリエステル繊維で完全に覆い保護することで、洗濯や長年の着用によるライクラの劣化を防ぎ、新品同様の伸縮性を持続させます。そして最後に、糸の最も外側となる表層を上質なコットンで覆うことで、肌触りが良く、見た目にも本格的なデニムの風合いを保証しているのです。

この特殊構造により、多くの「ジョグジーンズ」のような編み物(ニット)ではなく、伝統的なデニムと同じ「織物」でありながら、驚異的な多方向ストレッチを実現 。これにより、デニム本来の高い耐久性を維持しつつ、着用を重ねても膝が出たり型崩れしたりしない、卓越した形状保持能力を発揮するのです 。 

スタイルで選ぶ REPLAYを象徴するシルエット

REPLAYは、その革新的な素材(ハイパーフレックス)を、多彩なシルエットで展開しています。ここでは、ブランドのフィロソフィーを体現し、それぞれ異なるスタイルを提案する代表的なモデルをご紹介します。

ANBASS (アンバス) スリムフィット

ANBASSは、現在のREPLAYの中で最も人気が高く、ブランドの顔となっているスリムフィットモデル。

最大の魅力は、計算され尽くしたテーパードシルエット。腰回りや太ももには適度なゆとりを確保しつつ、膝下から裾口にかけて強めに絞り込むことで、脚のラインを美しく見せてくれます。

このカッティングが「ハイパーフレックス」の驚異的な伸縮性と組み合わさることで、スリムフィット特有の窮屈さを完全に排除。美脚効果と究極の快適性を両立させた、まさに現代のスタンダードと呼ぶにふさわしい一本です。

ANBASS

GROVER (グローバー) レギュラーストレート

GROVERは、REPLAYのラインナップにおいて最もクラシックなレギュラーストレートフィットを体現するモデル。

古き良きアメリカンデニムへの敬意を感じさせる、ストンと落ちる伝統的なストレートシルエットが特徴。変に細身にアレンジすることなく、ジーンズ本来の持つ道具としての普遍的な格好良さを追求しています。

特に、ブランドの原点でもあるダブルリングデニムのような、ヴィンテージ感の強い生地でその真価を発揮します。

ANBASS

*1 ダブルリングデニムとは?

ダブルリングデニムとは、デニムの骨格となるタテ糸と、表情を決めるヨコ糸の両方に、風合い豊かな高級糸を贅沢に織り込んだ、しなやかで丈夫なデニム生地のことを指します。

現在においても高品質なデニムのスタンダードであり、「リング×リング(Ring x Ring)」や「デュアルリングスパン(Dual Ring Spun)」とも呼ばれ、多くのプレミアムデニムブランドで採用されています。

ジーンズの生地は、色のついたタテ糸と、白いヨコ糸を綾織りにして作られます。「ダブルリングデニム」の「ダブル」とは、このタテ糸とヨコ糸の両方を指します。そして「リング」とは、リング精紡という、手間はかかりますがヴィンテージジーンズのような風合い豊かな糸を作るための伝統的な紡績方法のことです。

つまり、一般的なデニムがコストを抑えるためにタテ糸だけに高品質なリング糸を使うことがあるのに対し、「ダブルリングデニム」は、タテ糸とヨコ糸の両方に、その高品質なリング糸を贅沢に使用しています。これにより、生地の強度としなやかさが格段に向上し、穿き込むほどに美しい色落ちが楽しめる、深みのある風合いが生まれるのです。

創業者ブジオールが日本への旅行中に発見したと言われる、高品質なダブルリングデニム。タテ糸とヨコ糸の両方に、風合い豊かなリング精紡糸を贅沢に使うことで生まれるこの生地は、丈夫でありながらしなやかで、穿き込むほどに美しい経年変化を楽しめるものでした。  

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